勢い

レスリング女子57キロ級の世界選手権代表を懸けた決戦は白熱した。五輪4連覇中伊調馨選手と63キロ級でリオ五輪を制した川井梨沙子選手の女王対決である。両者共に"大事なのは気持ち"と明言していた。

試合は互いに譲らず、残り時間は1分に。伊調選手がタックルを仕掛け、川井選手は右足を取られたが、しぶとく耐えた。そして一瞬の隙を突いた返し技で二点を奪い、世界への"天王山"を制した。川井選手は「気持ちで負けず、勇気をもって攻め込んだ」と。一方で伊調選手は「梨沙子が強かった」と認めた。

"天王山"といえば、その由来は豊臣秀吉明智光秀が争った「山崎の合戦」にある。水陸交通の要地であった京都の天王山を先に取れるかが勝敗を決めたといい、以後、「勝負の分かれ目」を意味する語となった。先生は大学でこの戦の本質を学んだ。先生は秀吉の勝因を「絶対に天王山を取ってみせる」という「勢い」「執念」が違ったと示唆する。そして「戦いは『勢い』がある方が勝つ。最後の最後まで『執念』をを燃やした方が勝つ。それが恩師の人生哲学であった」と。

7月は"NR勝利の年"の一年の折り返し。前半の決勝点へ、"ここが天王山"と定め、執念を燃やし続ける中で栄光の道は開かれる。