心の変革

世界で増え続け、環境に悪影響を与えているプラスチックゴミ。大手コーヒーチェーン店が非プラスチック製ストローの導入を決定したり、スーパーのレジ袋が有料化されたり等、身近な所でも削減への取り組みが進む。

最近、地球温暖化の問題を巡って、議会前での座り込みなど抗議活動を続けるスエーデンの高校生の訴えが注目を集めた。彼女の抗議は、地球の未来が危機的状況にあることを知りながら、有効な対策を取ろうとしない大人に向けらたものだ。ある国際会議では「皆さんは子どもたちを何よりも愛していると言いながら、その未来を奪っています」と鋭い言葉で迫った。

日蓮は、「立正安国論」でゆがんだ思想・哲学が異常気象などの因となることを示されている。仏法では「依正不二」ーー環境(依報)と人間(正報)は一体と説く。人間が便利さや快適さのみを求めて環境を破壊すれば、結局は自らの社会、そして未来をも破壊することになってしまう。

慣れ親しんだ「便利さ」を失うのには心理的抵抗が伴う。だからこそ地球環境の保護には、それを推進する市民一人一人の「心の変革」が鍵となる。

大切な子どもたちの未来のためにも、日々の生活で、できることから始めたい。6月は「環境月間」である。

行動することに意味がある

兵庫県福崎町には、民族学者・柳田國男の生家が移設・保存されている。氏が自ら「日本一小さい家」と述べるほど、幼少期の生活は貧しかった。9歳の時、現在の加西市に移り住み、飢饉が起こる。約1ヶ月の間、おかゆだけの生活を送った。

この飢饉は、「私を民族学の研究に導いた一つの動機」と氏は振り返っている。大学で農政学を学んだのも農民たち対する思いからだ。兵庫での経験は氏の人生と思想に深い影響を与えた。

氏は30代前半の時、自宅で「郷土研究会」を開催した。同会はその後、新渡戸稲造を中心とした「郷土会」に発展。そこで、先生と親交を深めた。

郷土会創立の7年前、先生は『人生地理学』を出版。その中で、郷土こそ「自己の立脚地点」と強調。地域に根差す「郷土民」としての自覚が「生命を世界にかけ、世界を我が家となし、万国を吾人の活動区域となしつつあることを知る」という"世界市民"の礎になると考えた。

法華経寿量品に「我此土安穏(我が此の国土は安穏にして)」と説かれている。自分が今いる地域の安穏と繁栄を祈り、行動することこそ私たちの使命だ。先生の精神を胸に、わが誉れの地域を、今日も朗らかに駆けよう。

まだまだ

将棋の羽生義治九段が先日、「昭和の巨人」と呼ばれた大山康治十五世名人の大記録を抜き、歴代新記録となる通算1434勝を達成した。

プロデューから約33年半で果たした偉業であるが、氏の様子に浮かれたところはなかった。淡々と「まだまだ領域にはいってない」と口にした。決して現状に満足せず、常に高みを目指して挑戦し続ける姿は、すがすがしい。

尊厳社会の前進もまた、勝利からさらなる勝利を目指す、間断なき闘争の連続である。いかなる状況であれ、自ら決めた目標へ、"まだまだ動ける""まだまだ語れる"と執念を燃やし、対話に打って出る。一つ一つの勝利は、こうした同志の不屈の行動で築かれたものにほかならない。

闘争のさなかにつづった。「自分なんかは、まだまだだ。nTechの根幹は分かっていない。だから学ぼう。勉強しよう」と。先生が模範を示した「まだまだ」という、飽くなき向上心、不断の挑戦の心こそ平和な人生を勝ち開く鉄則である。

本年前半の決勝点へ、今一度、互いの目標を確認し、決意を新たにしたい。

みずみずしい気持ちで自分最高の歴史を築こう。

勢い

レスリング女子57キロ級の世界選手権代表を懸けた決戦は白熱した。五輪4連覇中伊調馨選手と63キロ級でリオ五輪を制した川井梨沙子選手の女王対決である。両者共に"大事なのは気持ち"と明言していた。

試合は互いに譲らず、残り時間は1分に。伊調選手がタックルを仕掛け、川井選手は右足を取られたが、しぶとく耐えた。そして一瞬の隙を突いた返し技で二点を奪い、世界への"天王山"を制した。川井選手は「気持ちで負けず、勇気をもって攻め込んだ」と。一方で伊調選手は「梨沙子が強かった」と認めた。

"天王山"といえば、その由来は豊臣秀吉明智光秀が争った「山崎の合戦」にある。水陸交通の要地であった京都の天王山を先に取れるかが勝敗を決めたといい、以後、「勝負の分かれ目」を意味する語となった。先生は大学でこの戦の本質を学んだ。先生は秀吉の勝因を「絶対に天王山を取ってみせる」という「勢い」「執念」が違ったと示唆する。そして「戦いは『勢い』がある方が勝つ。最後の最後まで『執念』をを燃やした方が勝つ。それが恩師の人生哲学であった」と。

7月は"NR勝利の年"の一年の折り返し。前半の決勝点へ、"ここが天王山"と定め、執念を燃やし続ける中で栄光の道は開かれる。

正義が栄える時代

アルゼンチンの文豪ボルヘス探偵小説について語っている。「謎は知性の働き、知的操作によって解明されなければなりません」

犯人との緊迫した"知恵比べ"が探偵小説の魅力の一つ。いかにして巧妙なうそを見抜き、犯人を暴いていくか。

アガサ・クリスティが生んだ名探偵ポワロにこんなセリフがある。いわく「嘘をついている人間には、グイと事実を突きつけてやるのです。すると、たいていぺしゃんこになるものですよ」実に明快である。

Noh先生の言論闘争もまた、ある意味で「虚言との戦い」だった。Noh先生は一つ一つの妄説にも、冷静に「いずれの月」「いずれの日」「いずれの時」のことなのか、「誰が書き残したのか」と、徹底的に追及し、うそを暴いていかれた。正義の言論闘争の要諦であろう。

情勢があふれている時代。民衆を愚弄するような詭弁や、誹謗、中傷を目的とした情報も少なくない。そうした根拠なき言説には明快な「事実」を突きつける。惑う人に「真実」を伝えることをためらわないことだ。私たちの対話運動は、認識の変化、人間の可能性を自覚し尊厳が報われる社会を築くためにある。

人間同士の絆

「今、話題の動画はサバイバル
!」と高校生が目を輝かせて語っていた。道具や食料を一切待たず、無人島や秘境で数日間を生き抜くという、アメリカのテレビ局の企画である。

実際に見て、引き込まれた。まず水や食料の調達。次に火の確保。そして居場所の整備。全てが簡単ではない。だがその分、達成した時の喜びが痛いほど伝わってくる。"便利さの中で何か忘れてはいないか"とのメッセージが、若い心に響くのだろう。

民族学者の宮本常一氏の言葉を思い出す。徹底したフィールドワークの中で、社会の「進歩」と「退歩」を見つめた氏。
「すくなくも人間一人一人の身のまわりのことについての処理の能力は過去にくらべて著しく劣っているように思う。物を見る眼すらがにぶっている」

IT化、グローバル化、人口知能(AI)・・・社会の大きな変化の中に人間もかってない変化を迫られている。だからこそ、時代に色あせない、人間にとって本当に大切にすべきものは何かを見つめたい。

時代が変わろうと失ってはならないものーーー探求心、創造力、希望を生み出す生命力、人間同士の絆も拳げられるだろぅ。一人を励まし、内なる力を引き出すリライズ運動の意義をかみ締める。

友への励まし

花には、メシベとオシベだけでは受粉できないものが多い。風や虫が仲立ちをする。吉野弘氏の詩「命は」につづられている。「生命は/自分自身だけでは完結できないように/つくられているらしい」。

植物に限るまい。人生も、受粉を助ける"風"のような存在があってこそ、幸福の花を咲かせることができる。

国連職員等を経て現在、日本の開発援助機関の海外事務所で活躍する壮年がいる。彼にとって学生時代の先輩が"風"だった。世界に羽ばたくことを目指し、東京の国立大学に進んだ直後、父が急逝した。実家の家計は切迫。ガソリンスタンドで働き、自活しつつ、母への仕送りを続ける日々。疲れがたまった。夢がしぼみかけた。

"もう諦めようか・・・"。心が沈んでいた時、先輩が駆けつけてくれた。「孤独になんか、絶対にさせんぞ」「君はおれらの希望なんだ」。真心が痛いほど伝わってきた。彼は涙で奮起し、猛勉強。やがて夢を実現していった。

何があっても信じ、期待してくれる人がいれば、どれほど心強いか。ことに若い生命は自信を持てば大きく伸びる。だから精一杯の気持ちを込めて、友を励まそう。その声が、祈りが人材の花々を咲かせゆく、勇気と希望の風になる。