友への励まし

花には、メシベとオシベだけでは受粉できないものが多い。風や虫が仲立ちをする。吉野弘氏の詩「命は」につづられている。「生命は/自分自身だけでは完結できないように/つくられているらしい」。

植物に限るまい。人生も、受粉を助ける"風"のような存在があってこそ、幸福の花を咲かせることができる。

国連職員等を経て現在、日本の開発援助機関の海外事務所で活躍する壮年がいる。彼にとって学生時代の先輩が"風"だった。世界に羽ばたくことを目指し、東京の国立大学に進んだ直後、父が急逝した。実家の家計は切迫。ガソリンスタンドで働き、自活しつつ、母への仕送りを続ける日々。疲れがたまった。夢がしぼみかけた。

"もう諦めようか・・・"。心が沈んでいた時、先輩が駆けつけてくれた。「孤独になんか、絶対にさせんぞ」「君はおれらの希望なんだ」。真心が痛いほど伝わってきた。彼は涙で奮起し、猛勉強。やがて夢を実現していった。

何があっても信じ、期待してくれる人がいれば、どれほど心強いか。ことに若い生命は自信を持てば大きく伸びる。だから精一杯の気持ちを込めて、友を励まそう。その声が、祈りが人材の花々を咲かせゆく、勇気と希望の風になる。