本来の『強さ』
その婦人は、反抗期の息子と衝突してばかり。「うるせぇな!」と息子が言えば、「なに!その口の利き方は!」とやり返す。
ある日、会合で一つのエピソードを聞いた。会長就任式で歌の指揮にたった時のこと。その勢いで、卓上のガラスの水差しとコップがぶつかり、どちらも割れてしまった。すると、当意即妙、「水差しは"コップがふれたから割れた"と言い、コップは"水差しがぶつかったのだから割れたのだ"と言うかもしれない」と。しかし「これが、綿とガラスだったらどうだ?決して壊れはしまい」。
話を聞きながら、婦人は自分が"ガラス"だったことに気付く。「子育ても同じね」と先輩が微笑んだ。「子どもを変えようとするのではなく、まず大人が変わることが大切よ」
強さとは、相手を打ち負かそうと意地になることではない。どんな縁に触れても、それに振り回されない力の異名であろう。子育て中の親に語った。「"綿"になって、ふんわりと子どもを包み込んであげるのです。それが本当の『強さ』でしょう」