異文化の融合
紀元前の18世紀頃から12世紀頃にかけてアナトリア地方(現在のトルコ)に王国を築いたヒッタイトは、知的財産の価値が分かっていた民族だ。当時極めて貴重だった鉄の製法が周辺国に渡らないよぅにし、丈夫な鉄製の武器で強国エジプトの対抗勢力にのしあがった。人の往来がまれな村はずれに炉を造り、最終製品にする工房も秘密にして、温度管理や焼き入れなどのノウハウの流出を防いだと考えられている。始めて鉄をつくったのは実はヒッタイトでなく先住民属との説が有力。だが技術を厳重に管理する能力には秀でていたわけだ。
昔も今もテクノロジーを押さえられるかが覇権争いのカギを握る。古代が鉄なら現代は人口知能やロボットなどの技術だ。米トランプ政権は中国が国をあげて米国の技術の機密情報を盗みだしていると警戒する。米中貿易競技で重点をおく一つは知財の侵害阻止。技術の流出防止に躍起なさまは「鉄の王国」とも重なる。なぜ鉄が生まれたかは謎だが、さきの発掘記はこんな見方を示す。金、銀、銅の細工にたけたアッシリア商人アナトリアにやってきて、鉱物資源の知識が豊富な先住民と試行錯誤するうちに製鉄の方法を発見したというものだ。技術革新を生む異文化の融合。トランプ大統領は移民敗訴を唱える。技術を生む力は大丈夫か。