誰かのため
進化論を提唱した生物学者・ダーウィンが生還して、今月で210周年。彼が主著『種の起源』を出版したのは、50歳の歳だった。
出版された日に売り切れるほど、反響は大きかった。だが進化論は聖書の教えに反することから、厳しい批判にさらされたことは、よく 知られる。
ダーウィンはたびたび、侮辱的な言葉を浴びた。それでも主張を曲げず、研究をやめなかった。その理由はこうである。「私は、自然科学にわずかの貢献をすること以上によい生涯を送ることは自分にはできないと考えた」
未来学者H・ヘンダーソン博士が環境改善の市民運動を開始したのも"子どもたちを大気汚染から守りたい"との一途な思いからだった。"環境を犠牲にする経済"に疑問を呈すると、学者から冷笑された。ならばと、博士は独学を重ね、数多くの論文を発表。世論は大きく動き、公害の法規制に繋がっていった。
利益や名声といった利己的な動機だけで非難や中傷に耐えてまで信念を貫くのは難しい。逆境にも自分の支えとなるものは「誰かのため」という目的観だ。自他共の幸福を目指す「菩薩道」ーーーその人は、苦難さえ向上の追い風にする、充実の人生を生きられる。