心の港
30年ほど前、歌手のアグネス・チャンさんが、アメリカの大学院で学んでいた時のこと。授業で「家族のあり方」が議論のテーマになった。
理想の家族像を問われたアグネスさんが、「父親と母親がいて、子どもが何人かいるというのが基本型だと・・・・・」と言った途端、一斉に反論が。では、父親か母親に先立たれた家族は? 子どものいない夫婦は? 結婚しない人は?ーーー議論の中、自分の固定観念や偏見に気付いた。
帰宅後、3歳の長男に聞いた。「いい家族って、どんな家族かな?」。すると近づいてきて、小さい手を胸に当てながら言った。"思い出すと、この辺が温かいもの"。一緒にいなくても、血縁がなくても、さらに生死をも越えて"心を温めてくれる存在"が家族なのだと思い至った。
多様化する社会で家族の形もさまざまだ。それでも変わらない物は何か。先生は家族について「ありのままの自分を受け入れてくれる『心の港』と。」どんな人生の嵐に遭おうと、安心できる"よりどころ"があれば、人は力を得て、再び立ち上がれる。
人間をつなぐのは「形」でなく「心」。この血の通った絆を家族にだけでなく、地域に広げ、社会を潤すのが我々の運動だ